2019年07月17日

7月前半の読書と感想、書評 2019/7/17(水)



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俘虜記 (新潮文庫) 大岡昇平

著者は外国語に堪能だったことから太平洋戦争中、フィリピンで暗号手として配属されていたものの、米軍の捕虜となり、その後終戦で帰国します。

そしてその実体験を元にして1948年にこの「俘虜記」の前半(捉まるまで)を発表します。最終的に第4章までが完成したのは1949年で、基本は著者自身の体験談と、その時に思った心理的な描写や考察が書かれていて、私を主人公としたほぼノンフィクションに近い小説というスタイルとなっています。

著者の作品では同じくフィリピンの悲惨な激戦と飢餓による人食を描いた「野火」(1952年)を24年前の1995年に読み、その後映画も見ましたが、その時は衝撃を受けたことを思い出します。

ところで、俘虜と捕虜の違いって何だっけ?って調べてみると、第二次大戦までは公式文書には「俘虜」、それ以降は「捕虜」となっていて、意味はまったく同じと言うことです。

太平洋戦争末期にフィリピンでは、35万人の日本兵が戦い、そのうち33万人が亡くなるという激戦地でしたが、生き残った人も無傷というわけではなく、多くは高熱が出るマラリアに罹り、また銃創で動けず捕虜となったおかげで、皮肉にも生還できた人もいます。戦場での生死は無慈悲なもので、偶然が大きく左右するものなのでしょう。

一度は死にかけた著者も、収容所の生活では、英会話ができると言うことから優遇されます。その時は生き延びるために誰もが必死で、捕虜同士の妬みやひがみ、収容所内の仕事による役得権利、軍隊の階級と収容所内での序列など、中にいた者でないとわからない詳細が綴られています。

「我々は社会において、常に自分より下に誰かを見出すものである。(292ページ)」と書かれているとおり、捕虜となり、または敗戦により敵軍へ投降し、恥辱は感じつつも、死から1歩後退して、安堵しているはずの俘虜の生活においても、やはりこうした人間の本能というか嫌な行為が蔓延しいます。

そういうことを考えれば、安寧なところに身を置き、匿名で他人を非難し、バカにし、中傷する人がネット社会において後を絶たないのも、そうした人間の基本的な本能なのかも知れません。

本文中は概ね客観性をもって書かれていますが、そこは1捕虜が直接見聞きできる範囲は限られ、人からの伝聞や想像なども多く、また著者の自身の考え方や、人の好き嫌い、評価なども加わり、また帰国してから数年経過後の執筆で、記録としては必ずしも公平で正確であるとは言い切れません。

但し、捕虜となるのは最大の恥と教育されてきた日本軍兵士の、実体験者としての貴重な記録であることは間違いなさそうです。

★★★

            

地層捜査 (文春文庫) 佐々木譲

多くの警察小説を書いてきた著者ですが、2012年に単行本、2014年に文庫化されたこの作品は、警視庁の特命捜査対策室シリーズの第1作目と位置づけられています。第二作目は「代官山コールドケース」(2013年)が既刊です。

このシリーズ2作は、松重豊と山本未來を主演とし、「警視庁特命刑事☆二人」というテレビドラマが2015年と2017年に作られています。

著者の作品は、「エトロフ発緊急電」や「警官の血」、「制服警官」「道警シリーズ」など、映画ではなく、テレビドラマ化されるケースが多いようです。これは原作者の著者の志向が映画よりもテレビということがあるのでしょうかね?よくわかりません。

テレビドラマの場合、小説の原作とは違い、演じる役者に合わせてぱっと見の派手さ、面白さや、ながらで見てもそれなりに理解できるストーリーの単純化が優先され、そして限られた時間内に収めるため、設定が大きく変わっていたりすることが多く、それは仕方がないことでしょう。

どちらかというと、映画の方が原作に割と忠実に作られているような気がします。

さて、この小説は、警視庁の中で、捜査を指揮する若手のエリート管理官にたてつき、謹慎処分を受けていた主人公が、15年前に起きて迷宮入りしたままの殺人事件の再捜査を命ぜられ、それの真実を暴き出していくという警察もの小説ではよくあるパターンです。

マイクル・コナリー著の「刑事ハリー・ボッシュシリーズ」でも「未解決事件捜査課(コールド・ケース)」に所属して解決していく「エコー・パーク」や「終決者たち」などの作品が多くあります。

アメリカでは元々重犯罪に時効という概念がなく、こうした未解決事件を取り上げることはしばしばありましたが、日本では2010年になり、それまで15年で時効が成立していた殺人など重犯罪に対し法改正がおこなわれ公訴時効が無効化されました。

以前ならできなかったDNA検査など、捜査技法の進歩により、古い事件においても新しい技術を使うことで、犯人の特定などが容易になってきたことからです。

この小説の舞台は新宿区の四谷三丁目の戦前までは花街として賑わっていたエリアで、バブルが弾けた頃に、元置屋の女将が土地売買に絡んで地上げ屋の暴力団員に殺されたのではと思われた未解決事件に、主人公と、四谷署で定年を迎えた元刑事の二人がパートナーを組んで挑むというストーリーです。

小説の事件現場となった四谷三丁目界隈については、新宿と四谷に挟まれたエリアで、私も知らなかったのですが、深い谷のような地形があり、なかなか興味深い地域です。

実在の地域を舞台とした小説で、しかも職場からはそう遠くないので、近々周辺を少し歩いてみて、その模様を書きたいと思っています。

★★★

            

文庫 定年後7年目のリアル (草思社文庫) 勢古浩爾

大ベストセラーになった「定年後のリアル」(2010年)に続き、2014年に発刊された二匹目のドジョウで、さらに三匹目として「さらなる定年後のリアル」(2015年)もすでに発刊されています。

その1作目は、リス天管理人が2018年に読んだベスト書籍(新書、エッセイ、ノンフィクション、ビジネス部門)で堂々大賞に輝いています。

つまり面白かったし、ちょうど自分が定年を迎える年代になって、身につまされたり、勉強になったり、身近に感じたということが大きく影響しました。

その続編も、期待しつつ買ってきました。

ところが、前回読んだ1作目と同じ内容がダラダラ繰り返されているのと、あとは定年や人生感に関して書かれた本からの引用と紹介ばかりで、ちょっと残念でした。

さらに、また個人的な素人レベルの趣味とか感想にまったく興味はわきません。

そりゃ、仕事を完全にリタイアし、目立たなく、地味にお金も使わず、毎日公園と図書館と喫茶店(あるいはカフェ)だけをうろついていて、交友関係もできるだけ絞り、そういう生活を日々淡々と繰り返していれば、なにか新しい斬新な発想がひらめくわけもなく、創造的な話しが書けるわけもありません。またそういうことを期待してもいけなかったのです。

結局は「定年後7年目の劣化」ということになってしまった感があります。

小説やエッセイ、映画などでよくある「二匹目のドジョウ」って難しいものです。1作目が思わずよくできた場合、読者や鑑賞者の期待値は当然に上がり、評価も厳しくなります。

1作目がなかなか刺激的で面白かっただけに、今回の2作目にも期待をしすぎたようです。3作目は私的には「ない」です。

★☆☆

            

私の家では何も起こらない (角川文庫) 恩田陸

2017年に「蜜蜂と遠雷」で直木賞を受賞した押しも押されぬ超人気作家さんの2010年発表(文庫化は2013年)の連作短編のホラー小説です。ホラーと言っても少しファンタジーも混ざっている感じですが、根はやっぱりホラーです。

そういうものがあったとは知らなかったのですが、怪談専門誌『幽』(角川書店)に連載されたのが初出とのことです。

ホラーは小説も映画も苦手なので、あまり積極的には読んだり見たりはしないのですが、こういうのに目がない人も多いようで、日本も平和です。

もっと言えば、現実の社会では、ホラーよりももっと不可解で怖そうな事件や事故が起きていたりして、作家や監督の創造力、演出力が試されている気もします。

さて、この小説ですが、ある丘の上に建つ古い一軒家にまつわる話しがメインで、そこで起きた悲惨な事故や不思議な現象などが次々と露わになっていきます。

設定はどこか外国のようで、その幽霊屋敷が建つ丘が、古代になにか宗教儀式に使われていた人工の場所らしいということで、そこに住む人達や、いたずらをする子供に災いが降りかかってきます。

場面があっちこっちと飛びまくるので、通勤中に少しずつ読む方法では、なかなか前後がつながらずちょっと苦心しました。物覚えも悪くなってきているせいでもあります。

これぐらいの分量なら、まとめて一気に読んじゃわなければダメですね。深夜、どうも胸騒ぎがして寝付きが悪いとき、一気に読むと、きっと朝まで目が冴えたままということになりそうです。

★★☆

            

社会を変えるには (講談社現代新書) 小熊英二

2012年に発刊された新書で、著者はよくわからない(Wikipediaでは著者自身かそれに近い人が一生懸命に書いたとしか思えない評価がいっぱい書かれていますが意味不明)社会学者さんです。

2013年新書大賞を受賞したと言うことで読んでみましたが、ダラダラと長いだけで、何が言いたいのか書きたいのか、やっぱり意味不明でした。

変に頭が良いのは認めますが、頭が良いのと、人に理解してもらえるのとはまったく別物だということに理解をされていないことは残念です。どうせなら、そのご自慢の才能を使って、もっとわかりやすい説明もできたでしょうけど。

結論的なまとめでは「自分はないがしろにされている」という意識が社会を変える原動力になるということだけど、どうもそうは思えません。

今の若者で強く感じるのは、仲間の中の自分の位置ではなく、人は人、自分は自分という割り切りがよくできていて、ないがしろにされていても気にしないというタイプが多いように感じます。

そうした若者が仲間を求めるのは、単に孤独だということを人には知られたくないという自身の見栄からで、その見栄さえなくなれば、ひとりで仮想空間で遊んだり、恋愛にも興味を抱かず、自己中心的な世界にいるのが安楽という感じです。

結局、社会を動かすには、代議員制である限り、自分の主張に近い人を応援し、議員になってもらうしかありません。そして風を起こすしかないのです。

そういう時の流れを作らない限り、デモやストを起こしても、この日本においてはなにも変わらないというのは歴史をみるまでもないでしょう。

★☆☆

【関連リンク】
 6月後半 湿地、偶然のチカラ、よるのふくらみ、転々、遠くの声に耳を澄ませて
 6月前半の読書 不死身の特攻兵、友情、あなたにもできる悪いこと、山女日記、アルトリ岬
 5月後半の読書 逆流 越境捜査、友がみな我よりえらく見える日は、友情、ピストルズ(上)(下)
 5月前半の読書 光のない海、地方消滅 東京一極集中が招く人口急減、家守綺譚、芥川症、バカ売れ法則大全
 4月後半の読書 ガール・オン・ザ・トレイン、自由とは何か、きらきらひかる、Yの悲劇、デッドエンド
 4月前半の読書 虚無への供物、未来の年表2 人口減少日本であなたに起きること、白いしるし、フォルトゥナの瞳
 3月後半の読書 教団X、新個人主義のすすめ、暗夜を渉る、何者、リアルワールド
 3月前半の読書 悟浄出立、言ってはいけない 残酷すぎる真実、死者の奢り・飼育、獏の檻、君の膵臓をたべたい





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2019年07月13日

雇用と働き方が変化したこの30年 2019/7/13(土)



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今さら感はありますが、平成を振り返るという企画の中で、日経産業新聞に掲載されていたこの30年間の「雇用・働き方の変化」という記事があり、それをベースとして、いくつかわかりやすいように社会状況も付け加えて備忘録的に年表にしておきます。

ちなみにこの30余年とは私が社会人となって働いてきた時代と概ね重なっています。この年表を見ていると、なにか懐かしいやら、嫌なことを思い出したとか、いろいろと複雑な思いが交錯します。

昭和60年
1985年
職場における男女の差別を禁止する「男女雇用機会均等法」制定、翌年施行
昭和61年
1986年
労働者派遣法施行
昭和63年
1988年
週の労働時間が40時間へ労働基準法改正
平成元年
1989年
連合(日本労働組合総連合会)が発足 
平成4年
1992年
公務員の完全週休二日制スタート、子どもが1歳になるまでの間、父親か母親が育児休業を取る権利を認める「育児休業法」施行
平成6年
1994年
就職氷河期」が新語・流行語大賞で審査員特選造語賞
平成7年
1995年
「育児休業法」が「育児・介護休業法」に改正
平成8年
1996年
経済界と大学が申し合わせた就職協定を廃止、翌年に内定日を除いてしばりがない「倫理憲章」に移行
平成9年
1997年
共働き世帯が専業主婦世帯を上回る、山一証券解散
平成10年
1998年
60歳定年義務化、「障害者雇用促進法」で身体障害者に加えて知的障害者の雇用義務化
平成11年
1999年
男女共同参画社会基本法」が成立、労働者派遣業種の拡大
平成12年
2000年
介護保険法」制度開始
平成14年
2002年
公立学校の完全週休二日制スタート
平成15年
2003年
年収300万円時代を生き抜く経済学 給料半減が現実化する社会で「豊かな」ライフスタイルを確立する! 」(森永卓郎著)がベストセラー
平成16年
2004年
製造業務の派遣解禁、紹介予定派遣の法制化、仕事も通学も求職もしないニートが社会問題化
平成17年 2005年 下流社会 新たな階層集団の出現」(三浦展著)がベストセラー
平成19年 2007年 団塊世代が60歳になり定年退職を迎える2007年問題
平成20年 2008年 東京・日比谷公園で年越し派遣村、非正規雇用が過去最高に、入社2ヶ月の社員が自殺するというワタミ事件発生、グッドウィル業務停止命令、翌年に破綻
平成24年 2012年 日雇い派遣の原則禁止、団塊世代が65歳になり現役を引退する2012年問題
平成25年 2013年 改正高年齢者雇用安定法」施行、希望者を65歳まで雇用することが義務化、ブラック企業という言葉が流行
平成27年 2015年 電通新入社員の過労自殺事件が労災認定され「働き方改革」が広がる
平成30年 2018年 残業時間の上限規制などを盛り込んだ「働き方改革関連法」が成立、経団連が2021年春入社からの就活ルール廃止を決定
平成31年 2019年 4月から「働き方改革関連法」の一部施行、残業上限規制や勤務間インターバル制度の導入、有給休暇取得の義務化など。外国人労働者の受け入れを拡大する「改正出入国管理法」も施行

この表の中で、私の個人的な仕事や生活に大きく関係したのは、

昭和61年 1986年 労働者派遣法施行
昭和63年 1988年 週の労働時間が40時間へ
平成4年 1992年 公務員の完全週休二日制スタート
平成14年 2002年 公立学校の完全週休二日制スタート
平成19年 2007年 団塊世代が60歳になり定年(退職)を迎える2007年問題

でしょうか。

あとのことは、なにか遠くの関係がないところで起きている事象ぐらいにしか思っていませんでした。

当時勤務していた会社が、人材ビジネス業界だったので、自ずと仕事で労働者派遣法に関係し、公務員の完全週休二日制によって、ようやく勤務していたブラックな環境だった零細企業でも週休二日が定着しました。

ちょうど子育てしている頃でしたので、子供の学校が週休二日になって、結局、子育て中の親は、仕事の休日が増えても、ゆっくり休ませてくれないのだなとガックリしたことを思い出します。

我々よりも10年以上先を行く団塊世代が定年を迎え、一斉に退職して人不足が起きる?という混乱が騒がれましたが、ちょうどタイミング良くリーマンショックが起きて、産業界が一気に不景気となり、人員不足はほとんど起きず、企業も厄介払い?ができて一息付けたって感じでした。

ところが、2014年には団塊世代がすべて65歳を過ぎ、雇用延長も終わり、年金生活に入ってしまったため、徐々に人手不足が深刻となってきました。

その結果として、女性の活躍推進と、外国人労働者の受け入れ増、そして働けそうな高齢者は死ぬまで働かせようとする1億総活躍社会です。

これらの改正が吉と出るか凶が出るか、その結果が出るのは令和に入ってからのこととなります。

今度の天皇は59歳で即位しましたが、今の60歳男性の平均余命は22.7歳ですから、平均的な寿命は82〜83歳ってことで、専属の医師団が付き、健康的な生活を送られている天皇が、上皇(先の天皇)と同じく85歳まで元気で職務をされたと仮定すれば、令和時代は26年で終わりとなります。平成の30年以上となる可能性はどうも低そうです。

さて、この令和の時代にはどういった「雇用・働き方の変化」が起きるのでしょうか。もうほとんど関係はないのですが、、、

【関連リンク】
1195 良きにも悪しきにも日本の古い雇用体系をぶち壊すか2018年問題
1169 定年起業
1010 不本意な非正規雇用とその実態
866 失業率とか雇用状況



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2019年07月10日

2019年6月に見た映画 2019/7/10(水)



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聖の青春 2016年 製作 「聖の青春」製作委員会 配給 KADOKAWA
監督:森義隆 出演者:松山ケンイチ、東出昌大、リリー・フランキー、竹下景子

原作は大崎善生氏の同名のノンフィクション小説で、天才と言われた将棋棋士 村山聖を題材としたものです。2001年には藤原竜也主演でテレビドラマが作られています。

その原作著作者は、元々将棋連盟に勤務していて、そこで主人公と出会い、交流があったことで、この作品が出来上がったようです。

この映画では村山聖を松山ケンイチが、村山の最強のライバルでもあり友人だった羽生善治役を東出昌大が演じています。東出昌大は羽生名人の特徴をよくつかんでいて、本人も見て苦笑いだったでしょう。

ノンフィクションが原型ですから、登場人物のほとんどは、実在する人達ばかりで、そういう意味では悪役というのは設定できないのですが、フィクションとは違うリアリティさがあってグイグイと引きつけられるものがあります。

主人公の村山聖は、病気がちの子供時代に覚えた将棋がメキメキと強くなり、順調に8段まで駆け上がり、名人の座ももう少しという位置まできていましたが、1997年に進行性膀胱癌が見つかり、手術をしたものの1998年に再発・転移が見つかり、同年29歳という若さで亡くなります。当時伸び盛りだった羽生氏との対戦成績は通算6勝7敗でした。

結果がどうなるかわかっていながらも、彼の半生を描いたこの映画では、天才棋士の短い青春像だけでなく、将棋界周辺のことや、両親、師匠、ライバル、業界など巻き込んだ話題性のある内容で楽しめました。

★★☆

            

ワタシが私を見つけるまで(原題:How to Be Single) 2016年 米
監督 クリスチャン・ディッター 出演者 ダコタ・ジョンソン、レベル・ウィルソン

原題を直訳すると「独身の作り方」、ちょっとヒネっても「独身万歳!」ぐらいかなと思うけど、こうしたあまり意味がわからない邦題をつけちゃうんですね。

ニューヨークを舞台にしたロマンティック・コメディで、ベタベタの恋愛ドラマでもなく、アメリカの若い女性達に憧れと共感を喚びそうな、自由奔放で、若いイケメンも出てくるし、ファッションも着古びたものではなく流行の先端のものを着て、夜な夜なパーティばかりやっているような既婚者にとっては羨ましいというか、もう満腹というか、元気でお金持ちなオネェちゃんばかり出てくる映画でした。

4人のそれぞれの恋愛観や生活を通して、独身者にも様々な行き方があってね、と言わんばかりのフェミニストを持ち上げるストーリーですが、そこはコメディでもあり、こうした映画は「寅さんシリーズ」のごとく、似たような内容で毎年のように作られています。

その中でも大ヒットしたものとしては、「ブリジット・ジョーンズの日記」(2001年)、「プラダを着た悪魔」(2006年)、「セックス・アンド・ザ・シティ」(2008年)などなど。

元気で胸を張って生きているおしゃれ感あるアメリカ人女性って感じですね。私には縁のない話しで、見るだけ無駄というか、時間つぶしにしかなりません。

★☆☆

            

お茶漬けの味 1952年 日本
監督 小津安二郎 出演者 佐分利信、木暮実千代、鶴田浩二、淡島千景
 
戦後は庶民の生活を淡々と描くことが多かった小津監督ですが、その代表作とも言える「東京物語」(1953年)の前年に制作されたモノクロの映画です。

庶民というと、ちょっと違うかなと思えるのは、主人公は丸の内に勤めるエリート会社員で、その妻も上流階級出身のマダムという雰囲気です。

自宅には住み込みの女中がいて、家事一切はその女中がおこない、妻は趣味に、交友に、旅行に、デパートで買い物にというのが日々の暇つぶしのようなもので、そういうことが一部のブルジョア界では普通の時代だったのですね。

戦後まだ7年目のまだ傷も癒えない時代に、こうした上流家庭の生活を見た多くの庶民達は、「こうした生活にあこがれる」と思ったのか、「なんだか別の世界みたい」と思ったのか、どちらにしても映画館を出てくるときにはため息ついていたことでしょう。

そうした経済的には恵まれた夫婦ですが、地方出身の夫をバカにしている都会育ちの妻との夫婦関係はあまりよくなく、何気なく余ったご飯に味噌汁をぶっかけて食べる夫に対し、強く非難をします。

あるとき、夫の海外出張が急に決まり、慌てて準備をして旅立ちます、その時妻は一人で旅行中で、電報を打つもすぐには帰ってきません。それに対し、友人が強く非難をします。

ところが、飛行機が途中で引き返し、夜遅くに家に戻ってくると、妻はすぐに帰ってこなかったことを謝り、夜食を食べようと二人でお茶漬けを食べ、ようやく二人の関係がよくなるという、しみじみとした物語。

いつかは、こうした生活をしてみたいな〜と思う人と、エリートで上流社会の人でも出身が違うと夫婦仲は悪いのね〜と思う人とかいろいろいそうです。

あとは、以前に見た「山の音」(1954年)もそうでしたが、終戦後間もない東京の各地をロケしていて、丸の内界隈や、パチンコ屋などの当時の風景が記録されているのも良い感じです。

★★☆

            

殺したい女(原題 Ruthless People) 1986年 米
監督 ジェリー・ザッカー、ジム・エイブラハムズ、デヴィッド・ザッカー
出演者 ダニー・デヴィート、ベット・ミドラー

あまり期待せずに見たブラックコメディ映画ですが、なかなかドタバタ劇がテンポ良くて面白かったというのが第一の感想です。

別になにか凝った作りとかがあるわけでもなく、アメリカ映画らしく単純でおバカなストーリーですが、なにも考える必要もなく、ただ1時間半を気持ちよくスカッとしたい時にはいいようです。

妻の財産を目当てに結婚した男が、妻が誘拐されて狂喜し、身代金の支払いも拒否し、誘拐犯に妻を殺させようとしますが、誘拐された妻と、誘拐犯との仲が次第によくなって、逆に妻を見殺しにしようとした夫に仕返しをするというストーリーです。

夫の愛人とその愛人の愛人、警察署長のスキャンダル、連続殺人犯などもほとんど無意味に関わってきますが、それ以上に注目なのが、誘拐された妻役のベット・ミドラー。

歌手としても有名な彼女ですが、最初に出てきたときは、醜いほどにお腹が出て太っていますが、誘拐で監禁されている間に、テレビのダイエット番組に触発され、見る見る間に痩せていくところが、「キャスト・アウェイ」(2000年)で無人島生活を送るトム・ハンクスのようで格好よいです。

★★☆

【関連リンク】
2019年5月に見た映画
ここ10年間に見た映画 その1(1999年以前制作映画)
ここ10年間に見た映画 その2(2000年以降制作映画)


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2019年07月06日

塩分取得過多を反省する 2019/7/6(土)



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最近、塩分の摂り過ぎにややナーバスになっています。別に健康診断で引っかかったということではありませんが、加齢とともにこの塩分量というのが健康と密接につながっているのがわかってくるからです。

若いときは、塩分を取り過ぎても、激しく消耗する頭脳労働や日々身体を動かしていることで、塩分調整機能が働き、ちょうど良い状態に保たれますが、加齢が進み、身体の代謝機能も衰えてきて、大きく汗をかくような運動もしなくなると、体内の塩分の調整がうまく機能しなくなっていきます。

元々、塩分は生きていく上では必須のもので、これが不足すると意識を失い昏倒することがあります。

しかし現代人にとってより問題となるのは塩分の過剰摂取のほうで、塩分の過剰摂取が引き起こす代表的な病気としては高血圧(動脈硬化)や腎臓病、心臓病、脳卒中、胃がんなどがあり、日本人の典型的な生活習慣病や成人病とも言われています。

世界保健機関(WHO)と国連食糧農業機関(FAO)では、1日当たりの塩分摂取量を5g以下、日本高血圧学会のガイドラインでは1日6g未満厚労省は成人男性8g未満、成人女性7g未満を推奨しています。

20160705_144ss.jpg塩分量5gと6gと言っても一般の人には実感が湧きませんが、以前入院した病院の食事(3食で塩分約6g)がだいたいそれに準じていることを知りました。

病院食で誰しも感じるのは「なんと味気ない」と嘆くぐらい塩っ気がありません。

それもそのはずで、例えば一般的なカップ麺の中には1個(1食)で塩分は4〜6gというのがほとんどで、それ1食だけで、1日3食分の推奨塩分に匹敵するわけですから、病院食の味が薄くなるのもわかります。

私は入院中、特に減塩を必要とする病気ではなかったので、薄味の病院食対策として漬物やふりかけ、醤油などを持ち込んでいました。

一方、外食の料理や加工食品のほとんどは、売るために味付けを刺激的に濃くし、また日持ちさせるために保存料の代わりとしても食塩が大量に使われていますので、外食や加工食品中心の生活で1日5gなんていうのは夢の夢のことでしょう。

せめて、できることとして、ラーメンのスープは飲まないとか、醤油やソース、ケチャップ、マヨネーズといった味付け調味料(純粋な辛子やわさび、胡椒、ラー油等は塩分ではないので問題はありませんが、お手軽なチューブ入りの汎用品には塩分が含まれることが多い)は使わないとか、塩分の多い味噌汁や漬物は控えるとか、減塩と明記されたものを選ぶしかありません。

20190531_504ss.jpgでも美味しいとついつい、ラーメンもスープの最後まで完食してしまうのですよね。

塩分を過剰に摂り過ぎたかな?って時には、塩分を体外へ排出する効果が期待できるカリウムが豊富な食品を食べると良いそうです。

カリウムが多く含まれる食品としては、果物ではバナナ、なつみかん、メロンなど、野菜では芋類、特に里芋、肉・魚類、海藻のとろろ昆布、干しひじき、納豆、牛乳、トマトジュースなどです。

ニンニクがたっぷり入ったラーメンを完食した後には、臭い消しと塩分排出のダブル効果を狙って牛乳をグビグビのむってのが良いのかもしれませんね。これからそうします。

あとは、食事の時に、できるだけ醤油やソースを使わず、胡椒や辛子、わさびで食べるとか工夫をしたいと考えています。

【関連リンク】
1332 鰹節の歴史とこれから
1033 変形性股関節症の人工股関節全置換手術(1)
634 味覚の変化について
556 塩の話



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2019年07月03日

6月後半の読書と感想、書評 2019/7/3(水)



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湿地 (創元推理文庫) アーナルデュル・インドリダソン

2000年に著者の地元アイスランドで発刊され、日本語の翻訳版は2012年に発刊された長編ミステリー「エーレンデュル警部シリーズ」の第3作目です。

但し、シリーズ第1作と第2作は日本語の翻訳版は出ていないようですから、国内ではこれがシリーズ第1作目となります。

著者の出身地でもあり、小説の舞台となるアイスランドって?日本人にはあまり馴染みがない国ですが、2018年のサッカーW杯ロシア大会に初出場し、人口わずか35万人という小国でありながら、強豪国のアルゼンチンと引き分けるなど大健闘したことで記憶にある方も多いのではないでしょうか。

また首都のレイキャビクという名前は意外とよく知られていて、日本と同様に水産業が盛んな地域で、観光では北極にも近くオーロラを見に行く人達が多く集まるところです。

そのアイスランドで老人が殺されるという殺人事件が起きますが、単純な物取りのような雑な犯行のようにも見えますが、犯人が書いて置いていったものと思われる謎の書き置きがあったことで、主人公の警部が殺された老人の過去を調べていきます。

その地道な捜査が結構退屈で、ダラダラとした文章が続きますが、特に驚愕の展開というのではなく、次第に過去の出来事が次第に判明し、犯人と犯行に至った理由が明らかになっていきます。

タイトルは、殺害された老人が住んでいたアパートが以前は湿地帯で、行方不明となっている老人の古い仲間がその地下に埋められているに違いないというところから、老人の過去が明らかになっていくきっかけとなり、その象徴として名付けられたのかなと思います。

警察小説と言えばアメリカかイギリス、せいぜいフランスぐらいしか思いつきませんが、アイスランドという地域の特性や、捜査方法などの違いなども楽しめ、広い世界を堪能できて楽しめます。

でもハッキリ言って、原書の原文が元々長ったらしいのか、翻訳がまずいのかわかりませんが、もっと簡潔に書いてくれ!って思いました。この内容の話しなら390ページある文庫本の1/3のページは容易に削れそうな気がします。

★★☆

            

偶然のチカラ (集英社新書 412C) 植島啓司

2007年発刊の新書です。内容がとても宗教的というか「こう理解するべきだ」みたいな教えが多いなと思っていたら、著者が宗教人類学者さんなのですね。

学者先生に多い、上から目線で、教義を教えてやるというスタイルにはやや反感を覚えてしまいますが、内容もあまり役には立ちそうもなく、どうでも良さそうな話しが多いので、軽い気持ちで読み流していけるので苦にはなりません。

数学論で確率は計算ができますが、生活の中で起きる偶然とは、必ずしも確率と同じではありません。

そこが、この本を書いたのが数学者ではなく宗教学者さんなのかな?と思ってしまいました。

ストレスがかかる日々の仕事や生活において、こうした偶然のチカラを理解しておくのと、イライラしたり悩むのとでは、その先の健康状態が大きく変わってきそうというのが私の感想と結論です。

★☆☆

            

よるのふくらみ (新潮文庫) 窪 美澄

女性らしい視点で書かれた男女3人の人間ドラマで、2014年単行本、2016年文庫化された連作短編小説です。

著者の本では、過去に「ふがいない僕は空を見た」(2010年)と「晴天の迷いクジラ」(2012年)を読んでいます。

1012 3月後半の読書と感想、書評「晴天の迷いクジラ」
931 6月前半の読書と感想、書評「ふがいない僕は空を見た」

主人公は幼なじみと同棲中の若い女性ですが、その同棲相手の弟が仲の良かった同級生でもあり、男女の関係でややこしくなっています。

女性視点で小説を書くと、一般的に登場人物の男性に対しては辛辣で、どうしようもない男達が書かれることが多いのですが、この小説に出てくる男性は思いやりもあり、イジメに立ち向かい、ちゃんと正社員で働き、コミ障害でもなく、両親とも仲が良く、と女性からすれば憧れの良い男性に描かれています。

逆に女性の主人公が、表向きとは違い、内面的な苦悩で心理的に破綻が見られていて、そういったところが女性読者にはウケそうな気がします。

本作品と同様に、結婚前の女性心理を描く小説というのが多いのも、読者に同年代の同じような悩みを持つ人が多いのでしょうか、その内面まではオジサンには理解できないしよくわかりません。

★★☆

            

転々 (新潮文庫) 藤田宣永

1999年に単行本、2002年と2005年に文庫化された長編小説です。著者の本は2001年に「理由はいらない」の1作だけを過去に読んでいます。

そしてこの作品は2007年にはオダギリジョーと三浦友和主演で映画が制作されています。

小説の中の二人の主人公のイメージと、役者さんのイメージがどうも合わない気もしますが、見ていないのでなんともです。

タイトルから想像できるように、目的地まで右往左往しながら、東京の街を転々と歩き回るというストーリーです。

映画では「イージー・ライダー」(1968年)や「ペーパー・ムーン」(1973年)、「あなたへ」(2012年)などロードムービーというのがよくありますが、当然小説でもそういう流れのものはたくさんあります。最近読んだ中で記憶に残っているのはローレンス・ブロック著「盲目の預言者」が面白かったかな。

3月前半の読書と感想、書評 2018/3/14(水)「盲目の預言者」

主人公は、大学を休学中で、アルバイト先のストリップ劇場の踊り子と恋に落ち、一緒に逃げようとしますが失敗し、闇金の借金に追われている中で、その借金取りの男からある提案を持ちかけられます。

「目的地まで一緒に歩くのに同行してくれたら100万円支払う」というもので、その理由などが歩きながら話しをしていく中で徐々に明らかになっていくというロードドラマです。

現実には絶対にありそうもないリアリティのカケラもないストーリーですが、それだけに自由な発想で奇想天外なことが次々と待ち受けていて、それなりに楽しめます。

こうした突拍子もない発想力の源泉はどこからやってくるのでしょうかね。

★★☆

            

遠くの声に耳を澄ませて (新潮文庫) 宮下奈都

読んですぐに感想を書けば良かったものの、少し間が空いてしまい、内容があまりにも薄味でサラッと流れて言ってしまったたため、ほとんど記憶に残っていないというのが本音のところです。

初出は単行本で2009年、文庫版は2012年に発刊されています。主に若い女性向けと思える、ほんわかする(らしい)12編の短編集です。著者の作品を読むのはこれが初めてです。

起承転結とか、刺激的なドラマ性とかはなく、ただ淡々と女性の深層心理を表現しているのかなぁという感じで、デビューから実質2作品目の本著は、その後の著者の活躍を見ると、この作品で多くの働く女性に共感を持たれたのではないかなと思います。

著者に対してなんの偏見も恨みもありませんが、60過ぎの昭和なオッサンが読むのにはあまりに不適でした。とにかく覚えちゃいないので、感想もへったくれもありません。申し訳ない。

★☆☆


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posted by area99 at 10:00| Comment(0) | 読書